Column :: vol.3 | 日本アニメの主人公たちの"家"と"ライフスタイル"との関係
サザエさん・ちびまる子ちゃんの家
日本人があこがれるサザエさんの家
日本アニメを代表し、最も長く愛されつづけられている作品として、まず思い浮かべるのが "サザエさん" ではないでしょうか。
最近では、殆ど見かけなくなった家や家族の情景がそこにはあります。
"平屋でニワトリが飼われている庭付一戸建"、"茶の間のある家"、"襖で仕切られた各部屋"、"二世帯同居(マスオさんは妻方同居)"等々です。
発刊当時から現在にいたるまで多くの日本人が理想の家族像として支持しています。
その支持する理由として考えられるのが、どこにでもありそうな日常の中で様々な事件、出来事に対し、ユーモアをまじえながら、常に平和に日本的情緒の中で物語が展開されていくことにあると思います。
まさにそのストーリーの中味(コンテンツ)に対して多くの日本人(外国人からの評価ももちろん高い)が共鳴しているのでしょう。
一方、街づくり、家づくりにかかわる立場からすれば、観点はやはりその街や家のつくりにどうしても注目してしまいます。
つまり平屋の日本家屋、ニワトリが飼われている庭、酒屋の御用聞き、お豆腐屋さんのラッパの音、主婦・子供が中心の家や街での出来事、家族全員がそろう茶の間での食事と会話、カツオとワカメが机をならべている子供部屋、お盆、お正月、その他の節句ごとの家族のイベント、そのどれをとってみても現代の街や家族にはない安心感・安定感があり、一種のあこがれさえ感じるのではないでしょうか。
そこには私たちがめざしている街づくり、家づくりの大きなヒントがあるのではないでしょうか。
そこで、その他の日本のアニメをもう少し思い返してみましょう。
ちびまる子ちゃんの家
次に同じ大家族の設定でこれまた主人公が女性(女の子)で長年愛されているアニメとして "ちびまる子ちゃん" があげられます。
女の子から見た家族、特におじいちゃんとのペーソスある話の展開は絶妙で、心あたたまるユーモアに時には心が洗われ、ほのぼのした気持ちにさせてくれます。
そのような話が展開される舞台も、これまた襖で仕切られた畳主体の平屋の日本家屋となっていることは注目すべきことだと思います。
平屋の日本家屋と健康的な家族関係
この2つの作品に共通するのは、多世代が同居しながら様々な楽しい物語を展開するうえで舞台として選んだ家の間取りが、平屋の日本家屋であることです。 つまり私たちが理想とする健康的な家族関係、ライフスタイルを表現するときに、最もフィットするのがプライバシーの点では難はあるものの、すべての部屋が襖や障子で平面的につながりながら、各部屋間を自由に移動できる旧来の平屋の日本家屋であったのではないでしょうか。 作者が表現したいライフスタイルと家の間取りは関係が深く、その他のアニメにおけるライフスタイルと間取りにおいても、興味深い関係がうかがえます。
part2につづく …… 次回おたのしみに