Column :: vol.16 | 社内研修2007

風の丘の葬斎場

設計者 槇文彦
大分県中津市大字相原

緩やかな土地に、斜めにゆがんでいる斎場。
建物に近づくにつれて、見え方が変わり
風の丘と、前庭の緑が出迎えてくれる。
一瞬、葬儀場ではなく公園のようにも感じる。

ポーチまで進み
扉を開けるとのを境に空気が変わるのを感じた。

ここは葬斎場、大切な人と最期のお別れをする処。
光と闇の強弱と水、音、質感で、
いくつもの感情が表現されていた。

特に、木目のついたコンクリートの壁に光の筋が走っているのがとても綺麗で
建築を見て初めて悲しくなった。

 

上から光が落ちてくる中庭からは、
とても青い空が切り取られていて
天国ってこういうところなのかと思わせるようだった。
開口を扱う繊細さを実感した。

敷地は相原山首遺跡に隣接しており、
今と昔の別れの場が混在していた。
建物がランドスケープによって表情を変えながら、
敷地の一部に溶け込んでいっていた。

 

最後に入った斎場は、八角柱の形をしており、
ランドマーク的な役割も担っている。

中と外の印象はまったく違い、
とても柔らかな光が足元から広がっていた。
大きく見ても、小さく見ても、
細部にわたって詰められている建築だった。

 

Posted by Inagaki